「緑茶と健康シンポジウム ~緑茶と新型コロナウイルス研究最前線~」の実績報告
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京都府農林水産技術センター農林センター茶業研究所
令和3年4月15日に京都府主催でおこなわれた、
「緑茶と健康シンポジウム ~緑茶と新型コロナウイルス研究最前線~」
の実績報告の資料が、京都府農林水産技術センター茶業研究所より公開されました。
主な内容を抜粋して掲載します。
詳細については、下記の京都府公式ホームページにてご覧ください。
http://www.pref.kyoto.jp/chaken/ryokucha_to_kenkousinnpojiumu.html
葛野お茶便り:食料新聞『お茶がコロナを迅速・効果的に不活化』京都府立医大の教授が指摘
https://深蒸し茶の葛野農園.jp/cms_wp/information/tea-nutrition-health-effect/858/
「緑茶と健康シンポジウム」
日時:令和3年4月15日 午後1時30分~午後4時30分
場所:宇治茶会館大ホール(宇治市宇治折居25 番地 2)
Zoom 配信
主催・共催・後援
主催:京都府
共催:静岡県、(公社)日本茶業中央会、(公社)京都府茶業会議所、
(公社)静岡県茶業会議所、(公社)鹿児島県茶業会議所
後援:鹿児島県
基調講演「緑茶のインフルエンザ予防効果に関する研究について」
静岡県立大学健康支援センター センター長 山田浩 氏
・診療所時代に茶産地の地域診療に従事
【カテキンとインフルエンザウイルスの基礎研究】
・緑茶の成分と効能 、特に カテキンの種類と効能 について
・インフルエンザ予防効果が期待されるのは、緑茶のウイルスに対する
「増殖抑制作用」「吸着阻止作用」「放出阻害作用」とヒトに対する 「免疫賦活作用」
・インフルエンザウイルスと新型コロナの構造と感染経路はよく似ている
・茶カテキンのウイルス吸着阻止作用 は、カテキンがウイルス外殻皮タンパクである
スパイクにくっついて宿主細胞への感染 を 阻 止 する。
【カテキンのインフルエンザ感染予防のヒト研究】
・緑茶及びカテキンのうがいによる検討
緑茶うがいを励行する小学校でインフルエンザ感染率が低下
複数の臨床研究により罹患率が減少 するが有意 な差を実証するまでは至っていない
・緑茶及びカテキン摂取による検討
小学生において 週6日以上の緑茶飲用により発症を減少
成人でもコホート内研究で罹患率が有意に減少
【急性上気道炎を引き起こすウイルスに対する茶カテキンの感染防御メカニズム】
・茶カテキンによる急性 上気道感染症への臨床研究の報告 は3例と 少ない
・カテキンの高濃度飲用により感染率が低下する傾向が見られた
【分子ドッキング法による茶ポリフェノールの創薬の可能性】
・EGCG 、 TF DG で新型コロナウイルス抑制効果の可能性が示された
パネルディスカッション「緑茶の新型コロナウイルスに対する効果について」
<パネリスト>
■京都府立医科大学 免疫学教授 松田 修 氏
■仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター センター長 西村 秀一 氏
■京都大学ウイルス・再生医科学研究所 准教授 三浦智行 氏
■静岡県立大学健康支援センター センター長 山田 浩 氏
■京都府農林水産技術センター 農林センター茶業研究所 技師 北尾 悠樹 氏
<コーディネータ>
■京都先端科学大学 バイオ環境学部教授 藤井 孝夫 氏
国内の茶生産の概要
各パネラーの研究概要
【京都大学 三浦先生】
・エイズウイルスでの研究成果を活用して、 新型コロナ疑似ウイルスによる中和活性測定法を確立した
・緑茶抽出物やカテキン類の抑制効果を測定し、一定の抑制効果が見られた
【仙台医療センター 西村先生】
・歯科口腔科や耳鼻咽喉科で治療時のリスク軽減を図る
・イソジンでのうがいで効果が認められる
・より日常的なものでの抑制を検討したところ、緑茶カテキンに着目
・カテキン標品で新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活性を測定
カテキン濃度、 1.0mg/mL と 10mg/ml の間で 活性が低下
細胞の事前処理でウイルスが普通に増えたことから、
細胞への作用ではなくてウイルスへの直接効果であろう
【京都府立医科大学 松田先生 】
・緑茶、ほうじ茶、紅茶のいずれかで10 秒間処理すると、
新型コロナウイルスの感染力が100 分の 1 ~検出感度以下に、低下する。
・同様の効果は、EGCG 、テアシネンシン A TSA )、
TF DG などのガレート型テアフラビン(以下、カテキン等)によって得られる。
・感染力の低下は、カテキン等が細胞に働くのではなく、
新型コロナウイルス粒子のスパイクたんぱくに作用したことによる。
・試験管内で正常人の唾液中に新型コロナウイルスを加え、緑茶や紅茶で処理しても、同様の効果が得られる。
・イギリス型変異株に対しては、緑茶の不活化能はやや劣る。
・カテキン類は、予防や治療への効果は十分ではないと考えられるが、
多くの人が他人と接する前に茶を飲用すれば、互いにうつし合うことが阻止され、
公衆衛生的に感染拡大を減弱できると期待出来る。
・臨床研究を開始した。
【茶業研究所 北尾技師】
・茶の分類について
・緑茶と紅茶・ウーロン茶とのカテキン類の成分量の違い
・カテキン以外の機能性成分(テアニン、ポリアミン)
・抽出方法による成分抽出量の違いについて
ディスカッション
・緑茶は治療薬ではないが、感染抑制に期待
・特に口に含むことで、飛沫感染で他人への感染抑制に期待
・公衆衛生の観点で、多くの人が飲用することで、全体で感染を下げることに期待
・臨床試験に進むには困難だが実施する価値はある
・疫学研究は(現在の国内の感染程度では)手法に課題がある
コーディネータ総括
・カテキンに代表される緑茶成分は試験管内ではあるが、
新型コロナウイルスを不活化させることを確認できた。
・毎日の緑茶飲用習慣が免疫を増進させ、口腔内のウイルス活性を低下させることで、
健康維持と感染防止に公衆衛生の観点からも有効と考える。
・日本の飲用文化である緑茶の再発見に期待したい。
報道機関 質疑応答
(新聞社)
Q:茶カテキンが新型コロナウイルスを不活化する作用は、口腔内で行ったものか。(松田先生への質問)
A:試験管内で、ヒトの唾液を用いた結果。
Q:今後の論文発表や臨床試験の進め方は。 (松田先生への質問)
A:論文は投稿中。臨床試験は結果がでるには時間がかかる。
(新聞社)
Q:基調講演ではカテキンがインフルエンザのスパイクについて不活化するというメカニズムだった。
コロナウイルスへも同じ効果を期待している実験なのか。(三浦先生への質問)
A:新型コロナはインフルエンザウイルスとは異なることから、作用機作を見るための実験を行った。
カテキンがコロナウイルスを抑制する効果は見られているが、
スパイクがACE2 かエフェクターのどこでブロックしているかは確認出来ていない。
Q:西村先生は臨床的な試験をされていると思うが、歯科や口腔外科など
直接唾液と触れる様な場面での対策として診察前にお 茶のうがいをする等 で効果が期待できるか。
A:高齢者はイソジンのうがいは持続できず、 最初は日常に飲用しているお茶で
効果が期待出来ないかとおこなっ ているが、 まずは標品で 論文 にした。
生活衛生 をサポートする 立場から、人と接触するような業界では、
まずお茶でおもてなしして、ウイルスの 口からの排出を下げる 提案をしている。
(茶生産者)
Q:夏芽にカテキンが多く含まれることから、
石臼で挽くなど夏茶を活用したカテキンの多く含まれる商品が作れないか。(北尾氏への質問)
A:二番茶など気温が高くて日差しが強い条件下で、 EGCG が多く含まれ、
それを粉末にすると全部摂取出来るので、カテキンが多いのは保証出来ると思う。
ただカテキンが多いとそれだけ渋みが強くなる。
日常飲めるものでカテキンがとれるようになれば良い。
(要望)玉露を抹茶状にしたものがあれば。 開発には協力したい。
(主催者)
Q:インフルエンザ A 型、 B 型と、新型コロナの変異ウイルスの違いは何か。(松田、山田先生への質問)
A:インフルエンザとの比較は 研究出来ていないので、答えられないが、
イギリス型に対してカテキンの効果が落ちることは実験で確認している。
ただ、イギリス型といっても株により異なることから、 詳しくは今後の研究によると思う。
A:インフルエンザウイルスに対するカテキンの効果は A 型、 B 型関係なく効果があると
報告されている。変異ウイルスでも同じかどうかは、わからない。

Zoom 配信画面・パネルディスカッション

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